イノベーションは一人の天才がもたらすのか?
エジソン、スティーブ・ジョブズ、マーク・ザッカーバーグ等の例が物語るのは、
多くのイノベーションは一人の天才が
奇跡的なアイデアを生み出す事によって起こるという事なのだろうか。
そうだとすると、多くの会社・組織に取って、
イノベーションなんて高嶺の花であって、
天才的救世主が現れる事を待ちわびるくらいしか
我々凡人が取りうる手段は無いという事なのだろうか。
ハイス・ファン・ウルファン(著) BNN新社
「スタート・イノベーション!-ビジネスイノベーションを始めるための実践ビジュアルガイド&思考ツールキット」
は、「いかにしてイノベーションを起こすか?」
という難解なテーマを、探検の物語として見事に解き明かしている。
FORTHメソッドという5ステップ/20週間で
コンセプトに基づいた幾つかのビジネス・ケース(企画書)を作成する
実践的なガイドブックなっていて、
イノベーションに必要なのは、天才的なひらめきよりも、
協力者を集め、最後まで諦めず、
柔軟に具体化するところまで推し進める方法論だという。
●「自分事」と感じさせる
私が感じたイノベーションを成功させるために最も重要なポイントは、
アイデアを「関係者全員のモノ」にすること、
つまり、関係者一人ひとりがそのアイデアを「自分のモノだ」と思える状況を作ることにある。
多くのアイデアが有る中で、誰だって自分のアイデアに固執するし、
他の人のアイデアより自分のアイデアが可愛い筈。
子供の運動会のビデオ撮影をする時に、
我が子にレンズを向け続けることは至って自然な事である。
関係者を巻き込みながら、イノベーションを進める上で
特に重要と思えたのは以下の3点だ。
①内部の協力者を得る
この「関係者を巻き込む」と言った辺りは従来は社内政治、
社内調整として、イノベーションに直結するような議論の対象には
なり得なかった様に感じているが、
本書における「FORTHメソッド」では、
ステークホルダー(特に意思決定者、最高幹部)にチームに入って貰う所が
組み込まれていて、実践的だ。
②顧客ニーズを捉える
顧客不満の調査⇒ソリューションのアイデア出し⇒テスト
と言った一連の流れも当然組み込まれている。
「リーン・スタートアップ」に代表されるような
「先ずは世に出してみてから顧客ニーズに合わせた変更・ピボットを繰り返していく」
と言った手法だと、アプリケーションの様なソフトウェアビジネス以外では
初期投資額が多き過ぎてやりづらい所も、
多くのアイデアを出して慎重に選定を進める手法でカヴァーしていて
業種を問わず通用しそうな印象を強く持った。
③タイミング
イノベーションに踏み出すべきタイミングかそうでないのか。
その辺りの判断基準も多くの観点でリストアップされていて、
多くの方にとって、「イノベーションと無縁ではられない」と思わせられる様な内容となっている。
適切なタイミングの船出であっても、決して全てが順調に行くことは無く、
「逆に全てが順調に進むのは革新的な事をしていない証拠だ」
とも書かれている。紆余曲折すら想定した「計画」を持って置くことが重要なのだと感じた。
著者は学者や研究者ではなく、
イノベーションの現場にファシリテーターとして参加している
イノベーションの経験者だ。
そんな著者の、その豊富な経験に裏打ちされた実用的なメソッドが描かれた本書は、
机上の空論ではなく、多くの組織にとってプラスになるアイデアが沢山詰まっている筈だ。
●行動へのヒント
・イノベーションは一人では起こせない
・いかに「自分事」として捉えるかが成果に直結する
最後までお読み頂きありがとうございました。
宮木俊明
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