2015年8月2日日曜日

書評:経済学の95%はただの常識にすぎない

経済学とは?

広辞苑には、「経済現象を研究する学問」とある。

経済現象には当然、
人の営みが大きく関与しており、
心理学、社会学、人類学、政治学などと隣接した分野であるとされていて、
自然の営みを対象とする化学や物理学等の「自然科学」とは、
その対象は異なる。

一方で、経済学の手法を持ってすれば、
森羅万象を科学的にアプローチできるとし
「経済学は自然現象を含めた万物をその手中に収めている」
かの様に語られる事もあるらしく、
そのような切り口の書籍も出版されている。




ハジュン・チャン著 東洋経済新報社
『経済学の95%はただの常識にすぎない』
では、「経済学は政治的議論である」と言っている。

つまり、経済学は科学ではないし、
「議論」である訳で、統一的な解答が得られる種類のものでも無いという訳だ。

その証拠に、少なくとも経済学には9つ程度の学派があって、
それぞれが異なる前提やルールの上に成り立っているため、
どの学派の主張を採用するかによって全く異なる解答が導かれる事になる。

時に為政者の都合に合わせて、あるいは為政者へのアンチテーゼとして
各学派の主張が成立しているのだが、
その成立過程や中心となる考え方がバランスよく語られていて、
大変興味深い。


貧困や食料問題、経済格差の問題等、
世界の課題の多くは経済の問題で、
経済的側面が解決すれば問題その物がなくなる様な物も少なくない。

一般的なイメージでは
例えば雇用や製造と、「経済学」とでは
直接的には関連しないように思ってしまうのだが、
経済学的な見地からこれらを見つめなおすと、
改めてその重要性により深みが与えられる様に感じられた。


「経済学」のみならず
あらゆる学問や仕組みは、
例えそれが政治的議論であったとしても、
それぞれの役割の中で、人を幸せにするためのツールであるべきであって、
有効なツールを有意義に使いこなす為に、
それを学ぶのだろう。

経済学が扱う「お金」
(これも一つのツールな訳であるが)
について、学ぶことは、あまりにも重要な事なので
専門家だけに任せておいてはいけないと、
著者は語る。

情報が溢れかえり、不確実性が高い現代において
その重要性はより高まりを見せていく様に感じている。

本書は、初心者向けのガイドブックと位置づけられていて、
歴史的な変遷や、実際の利用方法までわかり易くまとめらていて、
「専門家任せ」から脱却する最初の一歩としては
かなり楽に歩幅を稼げた気がした。


★行動のヒント
・経済学もそこで扱う「お金」もツールなので、その使い方が大切。
・答えがないからこそ、ツールを使いこなし、そこから自分なりの見解、哲学を検討してみる。

最後までお読み頂きありがとうございました。

宮木俊明





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